世界初の22番染色体解読を1999年に成し遂げた慶應大の清水信義教授は、その後のヒトゲノム国際協力計画で、2003年、ヒト設計図・ゲノムの全解読という前人未到の生命科学の快挙に大きく貢献されました。清水教授はこの間、癌やパーキンソン病など難病に関する原因遺伝子の解明や、診断、予防、治療法の開発にも貢献されました。一方、清水教授は地球上の生物、特に河川や海に棲む生物の遺伝子・ゲノムの解読にも熱心で、その科学的成果を産業利用することまで目指して、10年以上も前に、日本アクアゲノム研究会を発足されました。その活動の中で、清水教授はさまざまな魚介の中で、特にカキに潜んだ驚異の生命力に魅せられ、その秘密を遺伝子のレベルで解き明かそうとされています。「カキは成長の過程で雌雄同体の時期があり、水温や栄養状態の変化でどちらの性にもなれるという不思議な能力をもっている」と言っています。
一方、成長に関して優良な遺伝子を発見する研究によって、より豊富な栄養素を生み出すカキを選抜し、それらを養殖・増産する計画も進められています。さらに最近、地球環境の悪化と人口の爆発的増加によって地球食料危機が叫ばれていますが、「陸のタンパク源から海のタンパク源へ一大転換する可能性にもカキが最も貢献できる」と述べています。
清水教授は「地球の生物はどれでもヒトには無い固有の特徴的な能力をもっている。その超能力というべきものの情報はすべて設計図ゲノムに秘められている。それらをゲノムスーパーパワー(GSP:ゲノム超能力)と呼んでゲノムからDNAとして抽出し、そのベールを科学的に剥がし、産業創出など人間生活に役立てよう」と提唱され、GSPを冠した研究所を創設されその探索研究に励んでおられる。「何よりカキがもつ驚異の生命力はそのゲノムに設計されたスーパーパワーであり、感謝して食せよ」と言い、道元導師の教え、「人は命を食らうて命を繋ぐ」の心を忘れるなとも言っています。